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TRPGについて論ずる

その6…そして伝説へ〜印象に残るキャラクター作り〜

みなさんは、TRPGのPCの話で盛り上がったことはあるだろうか。あるとすれば、どういった形でPCの話が出るだろうか。

「PCの話で盛り上がる」ということは、「そのPCが好悪を別にして印象的だった」ということである。

では「PCのどこが印象的だったのだろうか?」ということに関しては、盛り上がった話でだいたい予想はつく。

最近では、「ルール的な面での選択に対する印象」というのが専ら話題に上がる。

例を挙げるとこんな感じだ。

・「シーフ/ウィザードとはまたイバラの道を・・・」(六門世界)

・「セルビナさんて、アクアでアダマスで『超巨大ガントレット』の人ですよね」(BoA2nd)

・「〈居合い〉15レベルのヤツか!」(TOKYO N◎VA)

挙げるとキリがないが、とにかく「ルール的な奇抜さ・突飛さ」などを見てそれが印象に残っているというケースが多い。

しかし、こんなものは同じ性能でもうひとり違うキャラクターを作ってしまえば、そちらに関しても同じことが言えてしまうので、キャラクターを印象づけるという点においては初期段階のさらに初期でしかない。

ルール上で「今まで誰もやってない選択肢」を使ってファーストインパクトのみを印象づけるため、揮発性が高い。そのキャラクターに見習って、同じタイプのキャラクターが量産されるような状況においては、それだけでは話題にすら挙がらない、「量産型」の一人ということになってしまう。

「量産型」で終らせないための工夫として、キャラクターに個性を持たせなければならないわけだが、キャラクターを印象づけさせるための個性には、いくつかの段階におけるファクターが存在する。

第一として必要なのは「印象に残る名前」である。

TRPGの性質上、ヴィジュアル的なものよりも先に言葉尻での表現が最優先されることは否めない。「名前」もそのひとつで、印象に残らない名前は記憶にすら残らないので後々話に挙がったりすることは少ない。そのキャラクターが如何に突飛な行動をとったとしても、名前で覚えてはもらえずに「●●●したヤツ」という風に覚えられてしまうのである。

そのキャラクターを扱うプレイヤーとしては、名前を覚えてもらえないというのはいささかショックである。そこで名前を覚えてもらうために、どのようなことをすればよいかを考えてみよう。

ジョンとかボブとかフレッドとか、インパクトの無い名前は覚えやすいが、そのキャラが余程とんでもないことでもしないかぎりは、すぐ忘れてしまう。

かと言って複雑すぎる名前もダメだろう。日本名のキャラクターなら名字に漢字が4つ以上あるともう覚えてもらえないと思っていい。名前に難しい漢字を当てるぐらいなら構わないが、その際使う字と読みをきちんと統合させないと覚えてもらえないだろう。

長すぎる名前はもちろん、発音の面倒な名前というのも、固有名詞として敬遠される。そんなときは自称でも他称からでもいいから、愛称をつけてそれで呼ばせる、というのがいいだろう。

名前に「ネタ」を盛り込むのも覚えやすくさせるいい手口である。ここでいうネタは、マニア対象のいわゆる「ネタ」だけではなく、古今東西におけるあらゆるところで拾われるネタのことを言う。

要はネタを使って語呂合わせで名前をつけるのだ。ここで使うネタは、PCの能力や背景設定に合わせて引っ張り出してくるのが適切であるが、その辺で見かけたモノ(お菓子とかジュースとか、TV番組のタイトルとか)をネタとして、それをもじってつけてもいいかもしれない。安易な方法なので、後々になって後悔するかもしれないと言うならオススメはしない。

ネタを使って名前を決める場合、遠回しなネタだったりあまりにもマニアックなネタだったりするとスルーされることがあるので気をつけよう。「ネタ元」を自分でバラさなければならない状況に陥ると非常に恥ずかしい思いをするのはプレイヤー本人である。

名前にネタを盛り込むのは覚えられやすい名前として非常に有効な手段ではあるが、キャラのコンセプト自体がネタな場合は、名前への直接的なネタの引用は避けるべきだろう。なにからなにまでネタだと判った瞬間、引いてしまう人の方が大半であるからだ。

TRPGを始めたばかりのころ、わたしも若気の至りでヤッテシマッタことがあるが、いまではひどく後悔している。

さて、名前が決まったら次に思いつくのはキャラクターの容姿ではないだろうか。

ただ、外見というのはPCを印象づけるためには必要な要素ではあるが、その世界観においてとんでもなくヘンテコなカッコや、かなり奇抜な容姿をしていないかぎりは、それを印象づけるのは難しい。

そういう「ヘンテコ」という意味では、最近のシステム(主にFEAR系)にはヘンテコな装備が多々存在するが、ほとんどがどこぞのメディアからパクってきた「ネタアイテム」である。

これらのアイテムはネタとしてのみ認知されることが多く、これらのアイテムを使ってネタ元のキャラクターを再現しようなどというのはオリジナリティ云々以前に、大概のプレイヤーの中では「エセ●●●(←ネタ元の名前)」としか認識されない。「あぁ、あのニセモノか」とか言われていい気のするプレイヤーはそんなに居ないだろう。

そういった意味で「ネタ」の引用には少なからずリスクが伴う。他人の「ネタ」を自分の「オリジナル」に加工できる技術が必要になるので、そう言った技術が無いと感じる人は「ネタ」を扱うのはやめてオーソドックスに行ったほうがいいだろう。

ヴィジュアル的な感覚というのは、個人個人でイメージがまちまちである。「板金鎧を着けた女戦士」というのでも、キルトのアンダーの上からチェーンメイル+ブレストプレートに篭手・すね当てを着けた姿をイメージする人もいれば、「オネェチャンアーマー」(胸・腰・手足だけ板金であとは素肌とか服とかが露出してる鎧。ツクダホビー社の絶版TRPG・WARPSファンタジーでは「ポイントアーマー」としてルールに載っている)を着てる姿をイメージする人もいるのである。個人の趣味趣向がそのままイメージ力に影響しているからだ。
本人はガッチガチのプレートメイルを着た硬派な女戦士をイメージしていても、他の人には「オネェチャンアーマー」を着たエロ担当の人と勘違いされることもあるのだ。

そういったイメージの食い違いを避けるためには、PCのヴィジュアルを描くのが一番手っ取り早い。
ヴィジュアルを描くことによる利点は、上記のイメージを統一できることもあるが、同じ装備を着ていても着こなし方やディティールなどのイメージをつかみやすく、描いていないキャラクターと比べるとやはり印象的になることは否定できない。

そしてヴィジュアルを描くことの最大の利点は、「そのキャラクターがどういう顔かわかる」ことだろう。「●●な容姿」といっても一概にどういった容姿であるのかのイメージはそれこそ多種多様であり、顔立ちや表情、髪形、プロポーションなどのイメージが、描いた絵を見せることで統一されるのだ。

とはいえ、ヴィジュアルでイメージが統一できたとしても、それがよほど印象的で、話になるような奇抜なものでないかぎり、ヴィジュアルだけで印象づけたと判断するのは早計である。

ヴィジュアルはあくまで初期段階、外見のイメージを統一させたに過ぎない。あとはイメージづけたキャラクターがどういう動きを見せるか、で印象が決まってくる。

ここまでの情報でキャラクターのうわべに関してはそこそこ印象づけることが可能であるが、これだけで「逸話」やら「伝説」やらを生み出すには至らない。

どんな名前でどんな格好をしていようとも、起こした行動が普通ならばそれ以上の印象を他人に与えることはできないだろう。

普通じゃなければ悪い行動を示したとしても印象に残すことはできるが、他人に悪印象を与えて喜ぶアフォはおるまい。悪印象というのはPCそのものではなく、「そのプレイヤーが操るPC」全てに対して先入観を持たれてしまう危険をはらんでいるのだ。

だが、悪い行動でもその場のノリやインパクトによっては、逆に相手に好感触を与える要素にもなり、その場において適切でない行動が必ずしも悪印象を与える原因にはならない。

たいてい逸話として挙げられるのは、「その場のノリでヤッチャッタ」とか「ダイス目のおぼしめし」とかそういった要因で起こった事件に多いが、日々の積み重ねによって固定された印象というのもある。

実際これらの逸話は、プレイヤーの意図に関わらず作られたものが大半なのであるが、惜しむらくは、この中で「逸話のほうは覚えているがキャラの名前を覚えてない」というのがある。

もちろんそのセッションに参加していないとそのキャラ名を出したところでちんぷんかんぷんだし、キャンペーンに参加したなら覚えていてもいいハズなのだが、こういう逸話だけのキャラクターは名前を覚えられることがほぼない。逸話のインパクトだけ印象に残って、そのキャラクターがどういう人物だったか、という印象が希薄なのである。

そこで考えねばならないことは、「どうやったら印象的なキャラに見られるか」である。

私的な考えとしてはまず、PCの行動パターンや雰囲気が名前にマッチしていると覚えてもらいやすいのではないか、と思っている。

前述しといてなんだが、ぶっちゃけネタな名前をつけるだけでは結局は言葉尻での説明をしなければならないし、プレイングが「名前負け」しているというPCも少なからず出てくる。

かなり曖昧な表現でしかないが、「そういう感じ」を他者に思い込ませることができれば、「勝ったも同然」だ。

もうひとつ、突発的なインパクトを狙うのではなく、普段の行動から印象づけるようにプレイングしていく、というのもひとつの手である。

つまりは、普段の行動から「こいつならこうする」という、他のプレイヤーから見てもある程度予測が立つようになるプレイングをしていけば、おのずと印象に残るようになるのではないだろうか。

また、そういった印象を持たれたPCが、普段の行動からは予想もつかないようなことをいきなり行った場合のインパクトも、「ただ狙うだけ」のインパクト狙いのプレイングよりも際立って見えるだろう。

逸話として生まれるTRPGのプレイ中の面白話は、プレイヤーの突飛な発想によって描かれるものが多く、その「突飛な」という性質上、天然ボケやうっかりといった普段とは違った行動をとることにより生まれる物が多い。

したがって、毎回しっかりプレイに集中しているプレイヤーほど、そういった事態に陥りにくく、そのプレイヤーのPCを中心とした逸話は広がりづらい。そういう人たちから見ると後々語りぐさにされるプレイヤーたちは案外うらやましく感じるのかもしれない。が、それは言ってしまえばプレイに集中してないために起こってしまう偶発的な事故、とも考えられるのだ。

だから自分のPCが語られてるからといって、自慢げになるのはプレイヤーとしていかがなものであろうか。

「ヤッチマッタプレイ」とか「うっかりプレイ」が語り草にされて笑われているのなら、反省すべき点でもあると感じるべきであろう。

それから、経験上オレ度(PCに対するプレイヤーの浸食度)の高いプレイヤーのPCに関しては、逸話として挙がりづらい。

そのプレイヤーのプレイを見て、PCが起こした行動もプレイヤーがやっているものとして見られがちになるからで、そのプレイヤーのPCの話はすべてプレイヤーの逸話として集約されてしまうからだ。

したがって「あの時●●(PC名)が・・・」というのではなく、「あの時◎◎(プレイヤー名)のキャラが・・・」という話として伝わり、PCの存在自体が希薄になっているのが実態であると言えよう。

また、オレ度の高いプレイヤーはプレイ中でも普段と同じような思考パターンを摂るので、PCがPCであるためのプレイヤーとのギャップを感じられないことも理由として挙げられるだろう。

PCの「ポーズ」を決めておくというのも、PC印象づけるために役立つファクターだ。

実際にいる例で言えば、「とどめは必ず口内に内蔵した火炎放射器で焼き払う」とか、シーンの各所で決めておいたセリフを織り交ぜるとか、である。

特撮やアニメのヒーローのような決めゼリフを考えるのも手だが、あまりやりすぎると「くどい」と思われがちになる可能性が有るので注意しよう。

その辺の「ポーズ」を使うポイントとしては、セリフならさらっと、アクションなどを交えた「キメ」のポーズなら、自分だけが見られている場面でだれの介入も入らないような状況(N◎VAで神業を使うときとか、特別にモノローグさせてもらえるときとか)で行うのがいい。自分のキマッているところを人に見てもらおうと他の人のプレイングを邪魔するような使い方をするのでは、「うざー」とか思われてもしょうがないのだ。

せっかく考えて生まれてきたキャラクターなのに、誰の記憶にも残らないというのは、正直に言わなくても淋しいものだ。

「愛着を持つ」というのとは別の意味で、他人に(自分でも)覚えておいてもらえるようなキャラクターを作ることを心がけたいと思うのである。

強要するつもりはないが、みなさんも「みんなに覚えておいてもらえるような、印象的なキャラクター」をプレイすることを考えてみてはどうだろうか。

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