アメリカ開拓史時代、「OK牧場の決闘」などで知られる保安官、ワイアット・アープの愛用した銃。
正式な名称は「コルト・シングル・アクション・アーミー・バントライン・スペシャル」。
コルト・シングル・アクション・アーミー(SAA、通称ピースメーカー)は、西部開拓時代に多くのガンマンたちに愛用された拳銃で、1892年から20年の間、アメリカ陸軍の制式拳銃としても採用されており、現在でも尚生産されている人気のある銃だ。
SAAの弾丸には、カタログ上.45LC(ロングコルト)弾となっているが、ウィンチェスターライフルとの互換性のために、.44-40弾を使用していたものが多かった。現在ではこの他にも.22口径や.45口径モデルなども生産されている。
SAAには通常3つのバリエーションがあり、市民向けの銃身長4.5インチモデル「シビリアン」、砲兵向けの5.5インチモデル「アーティラリー」、騎兵向けの7.5インチモデル「キャバルリー」となっている。
小説家のネッド・バントラインは、当時アメリカの開拓史に貢献した人物に対して、上記の3モデルよりもさらに銃身長の長い、12インチモデルを生産させて寄贈したといわれ、この12インチモデルのことを「バントライン・スペシャル」という。
このモデルのSAAは五挺しか生産されなかったのだが、ワイアット・アープに贈られたバントライン・スペシャルは、通常のバントライン・スペシャルよりもさらに4インチ銃身が長い16インチモデルであったらしい。アープはこの銃を鉄棒製のストックをつけて使用していたという話もある。
ただ、ワイアット・アープが16インチのバントライン・スペシャルを使っていた、という話は伝説である。
本当に彼にこの銃が贈られていたとしても、アープが実際に使っていたかどうかはわかっていないが、こんな銃身が40センチもある銃(抜き打ちすらできなそう)を使いこなせると思われていたほど、すご腕のガンマンだったということだろう。