ミストルテインは厳密に言うと武器ではない。神々の住むアスガルドの端に芽吹いた、若いヤドリギである。
ではこのヤドリギがなにをしたのか。
アスガルドの神々の主神オーディンと、その正妻フリッグの間に子供が生まれた。その神の名はバルドルと言い、眉目秀麗で欠点が見当たらないほどの完ぺきな神であった。
ある日、バルドルは自分の死を予言する夢を見た。それをフリッグに報せると、フリッグは、誰もバルドルを傷つけることはない、という誓いを立てさせるため、全ての世界を回った。
バルドルは誰からも愛されている神だったので、全ての世界の全ての物質は、バルドルを傷つけないという誓いを立てた、かと思われた。
しかし、この若いヤドリギだけには、若すぎるからという理由で、フリッグは誓いを立てさせなかったのである。
バルドルの美しさや人気を嫉んでいたロキは、このことを知ると、そのヤドリギを持ってきて、バルドルの実弟で盲目の神ホズに渡したのである。
バルドルには誰も傷つけることができないというのをみんな知っていたので、皆バルドルにいろいろなものを投げつけて遊んでいた。その輪の中にホズだけが入っていなかった。
ロキは、「僕がバルドルのいる方を教えてあげるから、君は思いきりそれを投げるんだ」とホズをそそのかし、ホズはそのヤドリギを力いっぱいバルドルに投げつけた。
すると、そのヤドリギは槍(矢という説もある)に変化してバルドルを射ぬいたのである。そしてバルドルは絶命した。
要はこのヤドリギが変化した槍、もしくは矢が「ミストルテイン」と呼ばれている。ある意味「ラグナロク」を引き起こした重要なアイテムだろう。